Chapter T:始まりはいつも突然で・・。
by.soria
2005/01/13(木)
あたりはしんとした深い深い闇の中、唯一の光といえば藍色に染まった海にぽっかり浮かんでいる白く黄色い月だけだろう。
そんな月の光が、昼間は気持ち良さそうに風に揺れている草木や静かに流れている川を照らしていた。
その川の少し離れたところで、周りの色と対照的である赤々と燃えている火の傍に、小さな身体を毛布でくるんでうずくまっているリンクが居た。
その彼の傍には茶色の毛並みをした馬のエポナが、のんびりそして静かにそこらに生えている草をもぐもぐと食べていた。
もしこの場に誰かがいたらとても穏やかな光景に見えたであろう。
だが、こんな夜更けにしかもいつ魔物が出るかわからない所に居る人なんてなかなかに居ないだろう。
そう、町にたどり着けず「今日も野宿か。」とぼやくような旅人でなければこのような時間帯に人がいるわけがないのだ。
それなのに、どこからか小さな声が聞こえてきたのである。
それに早く反応したのは、草を悠々と食べていたエポナである。
エポナは、目をぱちくりとさせ、キョロキョロしながら辺りを見渡した。
しかし、一見何も変化はなく、風がそよそよと吹いているだけだった。
再び目を見開いた後、隣で夢の世界へと旅立っているリンクの頭を鼻先でつついて起こそうとした。
「ん・・・ん〜・・・あと5分〜〜・・・」
起きることにぐずついているリンクは、体を包んでいた毛布を取られないようにギュッと抱き、そんまま再びウトウトとし始めた。
彼を寝させないかのように頭をつついたが、効果はなく諦めたように見えたが、今度は彼の顔に鼻の頭をすり寄せてきた。
「んー・・・何だ、エポナか。。ふぁー・・・どうかした?」
寝ぼけたままだがエポナの頭を撫でて、身体を起こし、んーと背伸びをしてそこでまだ夜ということを知った。
「何だ、まだ夜じゃないか。エポナ〜起こすなよ〜・・・」
そう言ってエポナの頭の毛をくしゃくしゃと撫でている時だった。
聞き取りづらいほど小さな声が、そのあたりに響いたのである。
エポナは、耳をピンと立て、また周りをキョロキョロとし始めた。
「エポナ?」
リンクは、エポナの落ち着きのなさに疑問をもち、彼もまた周りをキョロキョロと見始めた。
「だ・・・・・・・か・・・・」
まだ多少掠れているような小さな声だが、リンクの耳にも、はっきりと聞こえた。
リンクは、その声が聞こえた方へと足を踏み出した。
だが、その声はすぐに消えて、草が風に揺れているざわめきしか聞こえなかった。
エポナが川の方へゆっくりと歩み寄り、鼻先を水へとつけ円を描くようにまわしていた。
その瞬間、水が光って大きな光の柱が現れたのだ。
リンクは、その眩しさに目を細め、腕を額に当てて川の傍に居たエポナを探した。
あまりの眩しさになかなかエポナの姿が見えず、思わずぎゅっと目を瞑った。
――刹那、柱の方へと吸い込まれるような強風が吹き、うわぁ!と声を出したが、あまりの風の強さで音として出なかった。
周りがどうなっているのかと思いながらも、今、目を開けたら大変なことになるのではとも思いながらも結局、好奇心に負け瞑っていた目を見開いた瞬間、リンクは自分の目を疑った。
自分自身の身体が風にのり、宙に浮いていたのだ。
リンクは、なすすべもなく、そのまま風に身を任せ光の柱に吸い込まれていった。
それと同時に、光の柱もまたリンクを吸い込んだら何事もなかったかのように消えていったのだった。
どれくらい時が経っただろうか。
リンクはエポナの鳴き声と自分の頭をついている感覚で目が覚めた。
「う・・・んー・・・。・・・ここは、どこだ!?」
リンクが居たところは、野宿をしていた草の上ではなく、ひんやりとした水に囲まれた岩の上で壁のところどころには、透明な水晶らしきものがあり、ゾーラの里に似たような雰囲気はしていたが、残念ながらゾーラの里ではないようだ。
リンクは、多少青ざめながら、その場にただ呆然と立ちすくんでいた。
今、彼に聞こえるのは、心配そうに鳴いているエポナの声と静かに揺れている水の音だけだった。
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